eスポーツに関わる仕事をしていると、「でも日本でeスポーツって流行らないでしょ」といった言葉を言われることがあります。
そのたびに「流行るか流行らないかはいくらでも変わるし、今頑張ってる人たちのために自分たちも頑張っている」と答えますが、改めて考えるとeスポーツは日本で流行るのでしょうか?
この記事では、日本でeスポーツが流行らないと言われている理由について解説し、果たして今後のeスポーツはどうなっていくのかについてお話します。
目次
日本でeスポーツが流行らないと言われる理由
日本でeスポーツが流行らないと言われる理由としては、大きく分けて「ゲームに対する印象」「金銭面」「環境の差」「実力」の4つがあげられます。
ゲームに対するネガティブな印象
「eスポーツ」について語ると必ず言われるのが、「いやでもそれって”スポーツ”じゃないじゃん」という言葉。
日本における「スポーツ」とは例えばサッカーであったり、テニスであったり、野球であったり、「身体を動かす競技」をイメージしやすいですよね?
しかし、eスポーツは「身体を動かす競技」ではないため「スポーツじゃないじゃん!」というイメージを持つ人が多くいるんです。
また、スポーツという言葉は健康的で清潔なポジティブなイメージがありますが、ゲームと聞くと家で引きこもってる、コミュ障、根が暗いのようなネガティブなイメージがあります。
ただでさえ、ポジティブなイメージの強い言葉である「スポーツ」に対して、ネガティブな印象があるゲームが「e”スポーツ”」と名乗ることに違和感がある人は多く見られます。
しかし、eスポーツが”スポーツ”であるかどうかに関しては、中国のeスポーツの現状について知ると面白いことが分かります。
中国では、健全なインターネット文化を育てるという名目で「オンラインゲームの規制」が行われています。
一方で、国際レベル(世界と戦えるレベル)のeスポーツ選手の育成に力を入れており、中国では彼らを「アスリート」として扱っています。
また、2003年には国家体育総局(中華人民共和国のスポーツを統括する団体)がeスポーツを正式競技として認め、「eスポーツのスキルを極めることは中国のために身体を鍛えることと同等な愛国的行動である」としています。
このように、海外では既に「eスポーツはスポーツである」と認めているケースもあるのです。
日本が将来的にどのようになるかは分からないですが、IOC(国際オリンピック委員会)がOlympic Virtual Seriesと呼ばれるeスポーツに特化したオリンピックイベントを開催しており、世界的に見てもeスポーツはスポーツであると認める方向に動いていると言えるでしょう。
eスポーツで生活できない
現状、eスポーツだけの収入で生活できている人は極わずか。
多くのプロゲーマーは、eスポーツだけで生活ができないため、別で仕事を掛け持ちするなどしてサラリーマンの平均年収(436万円以下※)以下の収入で生活をしていると言われています。
参考「令和元年分 民間給与実態統計調査」
なぜ、eスポーツだけで生活が出来ないのかというと、大きく分けて「賞金の問題」と「市場の小ささ」が関係していると言われています。
まず賞金問題としては、日本の法律である景品表示法・風俗営業法・賭博罪が関係しています。
簡単に言うと、昔は日本ではeスポーツの大会で10万円以上の賞金を渡すことができませんでした。
しかし、今では「仕事の報酬として賞金を受け取る」という形であれば10万円以上の賞金を受け取ることができるようになっており、JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)もeスポーツ選手の賞金問題に
関して様々な動きを行っています。
一方、日本のeスポーツ市場は世界と比較してもまだまだ小さいです。
ファミ通による調査によると、日本の2020年におけるeスポーツ市場は約66.8億円。
一方世界のeスポーツ市場は10億5,930万ドル(約1,000億円以上)と言われています。
このように、世界規模で見ても日本のeスポーツ市場は非常に小さいです。
現状、少ないパイを全員で奪い合っている状態なので、ごく一部のプロゲーマー以外は稼げてない、ということになります。
コンシューマーor PCの違い
日本で長らく遊ばれていたゲームはコンシューマーゲーム(PS5,Switch、PSPなど)でしたが、今ではスマホゲームが主流で遊ばれています。
一方、eスポーツ大国と言われている中国・韓国ではPCゲームが多く遊ばれています。
PCゲームはネット環境がないとプレイできないことから、コンシューマーゲームよりも「オンライン対戦」という文化の発達が進んでいました。
一方、日本ではスマホゲームが流行する前はコンシューマーゲームが主体だったため、オンライン対戦という文化が海外よりも遅れており、その影響が日本人の「eスポーツの弱さ」につながると考えられます。
しかし、先日行われたLeague of Legendsの世界大会である「Worlds 2021 Championship」ではDetonatioN FocusMeが日本人史上初のプレイインテージ”を1位で抜ける結果を出しました。
FINALLY MADE IT!!!#DFMWIN #Worlds2021 pic.twitter.com/KQ4zl7oHLI
— DetonatioN FocusMe公式 (@teamDFM) October 7, 2021
これは「世界で上位16チームのうちの一つに日本のeスポーツチームが初めてなった」という偉業になります。
また、日本が発祥である格闘ゲームにおいても日本人は輝かしい成績を持っています。
特にEVO2019と呼ばれる世界最大の格闘技ゲームの大会では開催された9部門中4部門の優勝が日本人でした。
確かに、そもそもeスポーツのプレイ人口が少ないため、必然的に国内のライバルが海外と比べて少ないことから実力が伸びにくい現実はあるかもしれません。
しかし、それでも日本人はeスポーツが弱いという言葉にはNOを突きつけたいです。
育成環境の差
海外ではeスポーツを「ビジネス」としてとらえているため、勝つ為に様々な設備投資を行っています。
例えば「ゲームに専念できる専用の家」を作ってチームメンバー全員を一緒に生活させたり、チーム専用の「コーチやアナリスト(分析官)」を採用して、自チームの分析や敵チームの分析などを専門する人がいます。
日本ではまだまだ上記のように「設備投資を行える」チームは非常に少ないです。
理由は単純で、これらの設備投資にはお金がかかります。
しかし、多くのeスポーツチームはお金が稼げていません。
これは「選手たちが活躍していないから」ではなく、日本全体がまだ「eスポーツにお金を使う」ことに対して抵抗があるからです。
大会は見るけど、有料コンテンツは買わない。
選手は応援するけど、グッズは別に買わない。
どんなに強いeスポーツ選手であっても、お金がなければ生活できません。
生活ができないと、ゲームを練習する以外に働く必要があります。
そんな人たちが、監督やアナリストが専属でついて、かつ衣食住にも困らずに一日中ゲームの練習をし続ける人たちと対等に戦えるのかというと、厳しいものがあるのが現実です。
しかし、それでもeスポーツ選手たちはそれらを理由に「だから勝てません」とは言いません!
自分たちが出来る精一杯のことを選手たちは行い、選手が所属するeスポーツチームはその選手たちの支援を様々な形で模索しています。
グッズを作るのも、クラウドファンディングを実施するのも、配信をするのもお金を稼いでもっといい環境で選手たちに練習させたいという思いで行われています。
eスポーツチームは選手たちの育成環境を少しでもよくするために、様々なことを考え、実施しているのです。
今後も日本でeスポーツは流行らないのか
そもそも、eスポーツないしプロゲーマーの始まりとしては1977年に1997年に米国で設立された「Cyberathlete Professional League(サイバーアスリート・プロフェッショナル・リーグ)」が最初であると言われます。
そう、そもそもプロゲーマーとはたった数十年間に米国で初めて生まれた職業なのです!
たった数十年前にそれこそ初めて「プロゲーマー」と呼ばれる職業が生まれた背景を踏まえて、「eスポーツって流行らないよね」というのはまだ早いのではないでしょうか?
また、eスポーツが流行る・流行らないの話をすると「いやeスポーツって言っても日本人弱いじゃん」という言葉も多く聞きます。
確かに、せっかく応援しても負けてばかりだと応援する側も盛り上がりにくいですよね。
実際、世界で開かれている高額賞金の大会の結果を見ても、日本が活躍している姿は少ないです。
しかし、前述したようにLeague of Legendsの大会である「Worlds 2021 Championship」では、DetonatioN FocusMeのAria選手が世界で一番上手いと言われているFaker選手を1vs1で倒したりなど、日本人も(そして世界中の人も)驚く成長を見せています。
ARIA SOLO KILLS FAKER! #Worlds2021 pic.twitter.com/bos0cZMFe5
— LoL Esports (@lolesports) October 16, 2021
いわゆるオリンピックを始めとするスポーツ競技でも、体格の優れている欧米人に日本人が勝つには長い時間と道のりが必要でした。
それでも、日本人が金メダルと取ったという話は何度も聞きます。
eスポーツも同じように、時間はかかれども、日本も世界と戦えるレベルまで強くなれると信じてます。
そして、その時初めて日本でeスポーツが認められ、より流行の波に乗れるのではないでしょうか?
まとめ
- 日本のeスポーツでは賞金問題がありプロゲーマーとして生活がしにくかった
- JeSUの立ち上がりに伴い賞金問題は解決しつつある
- 世界と比べても市場規模は小さいが実力はまだまだ向上できる
確かに、今現在は日本人は世界と比較してもeスポーツの市場が小さく、日本中で流行っているとは言い難いです。
しかし、中学生男子の「将来なりたい職業」にプロゲーマーが入っていることから、確実にeスポーツの認知度は広がっています。
eスポーツが今後も盛り上がるかどうかは、1プレイヤーであるあなたと、eスポーツを盛り上げる我々eスポーツ関係者にかかっています。
eスポーツが流行る未来・流行らない未来、その分岐点に今我々は立っているのです!
今後も、我々eスポーツ関係者は日本のeスポーツを盛り上げるために様々な施策を届けれるように努力しますので、みなさんも是非それを楽しんでいただければなと思っています。